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“ドスン!”
ヒカルは衝撃で目を覚ます。
「痛てて」
突然何が起こったのか理解できないヒカルは、回りを見てみると天井の幕のようなもを突き破ってベッドへ落ちてきたことに気づく。
そこは、さしずめ遊牧民が暮らす“ゲル”のような建物であった。
痛めた腰に気を遣いながら立ち上がると、見た事のない入れ物、道具、服等がベッドのまわりに散らばっていた。 |
ふと机の上を見ると、一つの写真があった。
しかし、一人の顔は黒く塗りつぶされている。
とにかく表へと出ると、見た事もない雄大な景色が目の前に広がっていた。
呆然とするヒカル。
「何だ、ここは・・・」
あまりにも理解の限度を越えたことばかりおこる事態に、一向に頭の整理がつかない。
「夢なのか、現実なのかどっちなんだ・・・」
はっ、と気づくヒカル
「そうだ、母さんは! 病院はいったいどうなったんだ」
周囲を見渡すが、そこにはゲルのような建物が1つあるだけだった。
すると、突然、 "ガン!!”
ヒカルの後頭部に何かがぶつかる。
「くぅ~~!」
振り向くと、そこには見たことも無い生物(カイル)がいる。
「お前ここで何やってるんだ!?」
「うわ~~~~」おもいっきり後ずさるヒカル。
どう見ても特殊メイクには見えない。
「そんな。まさか・・・」こんな生物がいることを納得できないでいる。
「お前は誰だ!ここで何をしてる!!」
「何をって・・・別に何も」戸惑いぎみに答えるヒカル。
「人の家の前をウロチョロしといて、何もじゃないだろ」
ゲルのような建物へ目をやるカイル。
「ん?あ~~~!! おっおまえこれ・・・」
屋根が派手に壊れた我が家に言葉を失う。
「いや・・・これは、そういう分けじゃ・・・」
煮え切らない態度のヒカルを、手に持っていた槍のようなもので追いかけるカイル。
ヒカルはそれを必死で逃れようと小屋の周りを逃げ回る。
「待って!僕じゃない。僕じゃないよ」
カイルに家の壁へと追い込まれる。
「お前じゃなきゃ誰がやったってんだ!」
「そんなの知らないよ。そもそも壊した張本人が目の前でぼーとしてる訳ないだろ」
カイルは少し怪訝な顔をしながらも、「まぁ確かにそれはそうだが」
ウンウンと頷くヒカル。
「お前名前は」
「ヒッヒカル。〇〇(苗字)ヒカル」
「どこから来た。ここで何をしてる?」
「どこからって・・・」
上空を指差す。
上を見るカイル。 |
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「馬鹿にしてるのか!お前、やっぱりお前が壊したんだろ!」
その時、小屋の裏にある小高い丘の森が騒がしくなり鳥たちが飛び出してくる。
森から馬の嘶きとともに、蹄の音などが近づいてくることに気づく。
馬に乗った一人の男が何かに追われている。
男は一直線にヒカルとカイルたちの方向へ向かっている。
二人はその前の状況の事も忘れて、目を凝らす。
男は、獣らしき見た事もない生き物に追いかけられている。
「やばい!〇〇だ!!」
素早く物陰に隠れるカイル。
ヒカルも後を追う。
身を潜めながら様子を伺う。
「何だあれは!?」
「最近よく出る獣だよ。2ヶ月前ぐらいから出始めて、あっというまに広がっちまった。そんなことも知らないのか」
「あっああ・・・」
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「日の下で出てくる獣」
知性をあまり持たない下等クラス。
その分、光に順応している。
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近づいてくる男を見ていると背中に少女がつかまっているのが分かる。
しかし、どこか虚ろな目をしている。 |
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男と少女を乗せた馬は、ヒカルたちの近くでとうとう追いつかれ、獣と対峙する。
男と獣の戦いが始まる。
途中で少女が落馬する。
獣が少女へと向かう。
ヒカルはとっさに助けに飛び出る。
獣の爪がヒカルの服に引っかかり破ける。
首にかけていたネックレスがあらわになった。
すると、馬に乗った男が輝く何かを取り出し、その輝きで獣は逃げていく。
馬に乗った男はレオと名乗る。
少女は一言も喋らない。
男は手傷を負っているようだったので、カイルが近くの街まで案内することとなる。
天候が徐々に悪くなってきていたので、ついでに家の屋根に穴が空いて、雨が降ったら寝ていられないと、カイルは荷造りをする。
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宿につき休息をとる一同。
傷を負ったレオは、服を脱いで治療する。
レオの左の脇腹は、黒く変色している。
レオがヒカルに首飾りを見せてくれと言う。
どこでこれを手に入れたかと尋ねる。
父の形見だと言うヒカル。
レオは、〇〇〇家に代々伝わる伝承を話して聞かせる。
闇が世界を覆う時、それを払う者が現れると言われている。
その者は、異国の衣をまとい、〇〇の文様の入った装飾品を身につけていると言われる。
etc...
その話を聞いて、ハッとするヒカル。
フードを目深に被った男の言葉を思い出す。
“この世の闇を払う時、願いは叶うであろう”
「まさか・・・」
“トントン”ノックをして宿の人間が入ってくる。
「服をご用意しました」
レオが言う「服をダメにしてしまったから。良かったらそれを着てくれ」
ヒカルは服を受け取り着替える。
外が騒がしい。
人々の悲鳴が聞こえる。
窓へと駆け寄るレオ。
夕闇に紛れて獣が迫ってくる。
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「こんなところまで」
その時、窓を突き破り一匹の獣が部屋へと飛び込んでくる。
身構えるレオ。
獣はこちらの様子を伺っている。
レオは一振りの剣をヒカルへ渡す。
「それを持ってトルトイズ国へ行け。王が力になってくれる」
「しかし!」
「いいから!その代わり、ユウナを王のところへ連れて行くんだ」
動きだす獣。レオへと飛び掛る。
「行け!!」
部屋を飛び出すヒカルたち。
襲われる町を横目に必死に町から逃げ出す。
離れた丘から町を見下ろすヒカルたち。
町は燃えている。
「どうなるんだ・・・これから」ヒカルは呟く。
「まぁ何とかなるだろ」軽い調子のカイル。
悲しげな目で町を見下ろすユウナ。
「まぁ、この子を送り届ける義理はねぇが、ちょうど退屈だったとこだしな。行こうぜ。ヒカル。トルトイズ国へ」
“ここからヒカルたちの冒険が始まる”
山を越え、谷を越え、幾つもの街を越え。 |
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