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[現代]
“カンカンカン”踏み切りの音がする。(夕暮れ)
“ガン!ボン!ドサ”倒れる人(踏み切り近くのトンネル)
「スカシてんじゃねぇよ!」
去っていく男たち。
ヒカルは無言で立ち上がり服をはらう。
自宅へ帰るヒカル。
帰宅に気づく母親。
「あら、お帰り」
玄関へと向かう母。
「どうしたのヒカルその怪我」 |
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「なんでもないよ」
「なんでもない事ないでしょ」
母を横目にリビングへと向かう。
「ちょっと待ちなさい」
そこには父の遺影の飾られた仏壇がある。
一瞬足を止めるが、そのまま自分の部屋へと入っていく。
その晩、トイレへ行こうと部屋を出ると、母が父の遺影を前に話をしている。
「あなた。最近ヒカルの様子が変なの。口数も減ったし、怪我をして帰ってくることだってあるし・・・。やっぱり、母親だけじゃダメなのかしらね」
母は少し寂しげな顔をすると、蝋燭を消して部屋へと戻っていく。
ヒカルはトイレから戻ってくると、一人、父との思い出を思い返していた。
父は考古学者として世界中を旅する研究者だった。
“ マヤ・アステカ・インダス・エジプト・ギリシャ”数えたら切が無いぐらいの遺跡を回っていた。
たまに家へ帰ってくると、これまで旅した胸がワクワクするような話を聞かせてくれ、いつもそれが楽しみだった。
そんなおり、父は1つのプレゼントを持って帰ってきた。
それは、小さな綺麗な石のついたネックレスだった。
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「いいか、ヒカル。この石はな、人の願いを1つだけ叶えてくれるんだ」
「ほんと!」
「ああ。でも、これは大切なものだから無くすんじゃないぞ」
父はそう言いながら悪戯な笑顔を浮かべていた。
「うん!もちろん!」
「良い子だ」
父は僕の頭を力いっぱい撫でてくれた。
翌日、学校へ向かうヒカル。
首には、父から貰ったネックレスがかかっている。
夕方、学校も終わり自宅へ帰るヒカル。
先日のトンネル付近まで来ると、また、クラスの不良グループがたむろしている。
その横を行過ぎようとすると、突然後ろから蹴り飛ばされる。
「おいおい。また無視して行くきか」
「挨拶ぐらいしたらどうだ」
集まってくる不良。
「うるさい。もう、こんなくだらないことはやめたらどうだ」
「何~。父親を殺したやつが何言ってんだ」
黙り込むヒカル。
「もういいから早くカラオケ行こうぜ~」
「分ったよ!」
最後に蹴りを一発入れて去っていく。
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自宅が近くづくにつれ何やら辺りが騒がしい。
近所の人たちが集まってきている。
胸騒ぎのするヒカルは、小走りになる。
そこには一台の救急車が止まっている。
よく見ると、一人の女性が担架に乗せられている。
「母さん」
駆け寄るヒカル。
「母さん!母さん!」
「あ!ヒカル君!」
近所のおばさんたちがヒカルに気づく。
「皆で世間話していたら突然倒れちゃって・・・きゅ救急車呼んだんだけど・・・」
「君はご家族かね!」
救急隊員が尋ねる。
「どうしたんですか!?母さんは・・・母さんは・・・」
小刻みに震えるヒカル。
「病院へ運びますので、乗ってもらえますか」
冷静に対応する救急隊員にうながされ、ヒカルは救急車へ乗った。
手術中のランプが消える。
中から医師が一人出てくる。
駆け寄るヒカル。
「脳梗塞による、くも膜下出血でした。手術は成功しましたが意識が戻るかどうか・・・」
「そんな・・・」
ICUに横たわる母親。
看護婦に促され部屋を出るヒカル。
風に当たるため屋上に出る。
「何でこんなことに」
ヒカルの頭の中では、今までの母との生活が走馬灯のように思い浮かびあがっていた。
“ガン” 転落防止の柵を蹴りつけ、拳を強く握り締め手すりを叩く。
「くそ!くそ! 十分苦労してるじゃないか・・・これ以上どうしろっていうんだ」
悲しみや怒りなど様々な感情が入り混じった涙が流れる。
「助けてよ・・・父さん・・・」
ヒカルの胸元のネックレスが淡い光をともしだす。(ヒカルは気づかない)
突然の耳鳴りがヒカルを襲う。
耳を押さえるも鳴り止まない耳鳴り。
すると、上空から辺りの景色が見るまに変わっていく。
夜の病院の屋上だった場所が、一面緑生い茂る夜の大地へと変わる。
突然の出来事に動揺するヒカルは現状を理解できずうろたえる。
気づくと、そこにはフードを目深に被った人物が立っていた。 (顔を窺いしることは出来ない)
「なっ・・・えっ・・・」
さっきまでそこにあった病院の柵・床・扉、全てが消えてしまった。
むしろ、消えたと言うより、自分自身がどこか見知らぬ土地へ知らぬ間に移動してしまったかのように感じる。
動揺するヒカルにフードの人物が話かける。
「この世の闇を払う時、願いは叶うであろう」
いまいち状況を把握できないヒカル。
「この世の闇を払う時、願いは叶うであろう」同じ言葉を繰り返す人物。
ヒカルは動揺で声が思うように出ないが、精一杯声を振り絞る「なっ何が・・・」
「この世の闇を払う時、願いは叶うであろう」
「だから何がだよ!」
「闇を払うのだ」
フードの人物が手を上げると、回りの木々がヒカルの体を覆い出す。
「うわ!なんだ!!おい!!」
ヒカルは必死に体にまとわりついてくる枝葉を払うが、あっというまに木々に飲み込まれてしまった。 |
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